海外の街で現地の人に話しかけようとした瞬間、言葉より先に何かに阻まれる。暗闇を手探りで歩いているような、あの感覚です。本記事では、ICPAで国際プロトコールへの第一歩となる講座を修了したS.Y.さんの口コミと感想をご紹介します。
その壁は、語学力だけでは越えられません。この記事では、壁の正体が何であるのか、なぜそれは才能ではなく体系として学べるのか、そしてエチケットの学びがどのように国際プロトコールへとつながるのかを明らかにします。政府機関や企業経営者への研修を手がけるICPA学院長・白羽セシリア美麗が、受講生の言葉を読み解きます。
S.Y.さん The Finishing Touch 国際教養マナー講座(現 The Social Elegance)修了
語学力より先にあった見えない壁
S.Y.さんを阻んでいたのは、語学力ではありません。言葉の手前にある、目に見えない規範でした。
The Finishing Touch 国際教養マナー講座初級を受講させていただき、ありがとうございました。 受講が終わって約1ヶ月が経ち振り返ってみて、この講座に出会うことができて良かったと改めて感じております。
国際的なコミュニケーションにおける不安を解決方向へと導いていただいたこと、そしてその過程で必要不可欠な、自分をより魅力的に表現する方法を教えていただいたことが、印象深かったです。
今では、自分の一部となり始めているように感じるお講座の内容ですが、もし学んでいなければ自分は受講前のままだったのだと思うと、怖いような気すらいたします。
私がこのお講座を学びたいと思ったきっかけは、今まで海外旅行へ行った際、現地の人とコミュニケーションを取ろうとした時に感じた違和感でした。
語学力の問題もありましたが、それ以前に何かもっと違う、壁のようなものを感じていました。
何かとても不自由な感覚がするのは言葉の壁のせいであるとしても、それ以上に、自分だけが目が見えないかのような、暗闇を手探りで歩いているような気持ちになりました。
語学は、努力の量が成果として見えやすい分野です。一方、その手前にある規範は、誰も言葉にして教えてくれません。だからこそ多くの方が、違和感の原因を語学力のせいにしたまま通り過ぎてしまいます。
では、その壁は何でできていたのでしょうか。S.Y.さんは講座を通じて、その答えを二つに分けて見いだしました。
壁は二重だった 暗黙のルールと、それを支える精神
壁の正体は、ルールを知らないことと、その根にある精神を知らないことの二重構造です。
そしてこの講座を学んだことで、その壁の正体がやっと分かった気がしました。
その壁とはひとつは、欧米の文化に根付き空気の中に流れている暗黙のルール、マナーズやエチケットに関係する事柄をよく知らないこと。
ふたつ目は、それがどのような精神に根付いているのかを理解していないことで、二重の壁ができていたのだと分かりました。
その五里霧中の状態で、不安を感じながら人と接していたために、余計にぎこちないコミュニケーションになっていたのでした。
この気づきは、文化人類学の知見と正確に重なります。エドワード・T・ホールは『沈黙のことば』(1959年)で、文化の多くは本人も意識しない層で受け継がれ、人はそれを説明できないまま身につけていると論じました。さらに『文化を超えて』(1976年)では、意味の多くを文脈に委ねるハイコンテクスト文化と、言葉で明示するローコンテクスト文化を区別し、日本を前者の典型として挙げています。
日本人は行間を読むことに長けています。しかしそれは、自分の文化の行間に限った話です。別の文化に入れば、ルールそのものが分からないうえに、ルールの背後にある考え方も見えません。
| 壁の層 | 欠けているもの | 起こること |
|---|---|---|
| 第一の層:形 | 何をすべきかという知識 | 振る舞いに迷い、動作が遅れる |
| 第二の層:精神 | なぜそうするのかという理解 | 想定外の場面で判断できない |
第一の層だけを埋めても、知識の暗記にとどまります。二つの層がそろって初めて、初めての場面でも自然に振る舞えるようになるのです。
では、その二つの層はどうすれば身につくのでしょうか。S.Y.さんは、自分が「不器用」だったことにこそ意味があったと語っています。
天性の勘ではなく、体系として学ぶということ
国際的な振る舞いは、生まれ持った才能ではありません。書き記され、受け継がれてきた体系です。
天性の勘で上手に切り抜けていける方も世の中には存在しますが、私が良かったと思うのは、自分が不器用であった為に、なんとなくではない由緒ある知識を一から学ぶことができた点です。
西洋では1530年、エラスムスが『少年礼儀作法論』を著し、作法を「教えられる知」として書物にまとめました。社会学者ノルベルト・エリアスは『文明化の過程』(1939年)で、こうした作法書が宮廷社会を通じて広がり、人々の振る舞いの規範を形づくっていった過程を分析しています。
日本も同じ道を歩んでいます。武家の礼法を担った小笠原流は、14世紀後半に礼法を書に記したと伝えられ、作法を口伝から体系へと移しました。勘に頼る振る舞いは場面が変われば崩れますが、体系として学んだ振る舞いは崩れません。
S.Y.さんは、この講座を勧めたい方について次のように述べています。
そのようなことから、私のように、海外の方とのコミュニケーションに不安があると言う方にもちろんお勧めですし、また、西洋のエチケットやコミュニケーションにはもともと自信があるという方にも、自分のスキルを確かめる良い機会となると思います。
男性女性それぞれに役割があるため、女性の方も男性の方も、お講座の内容を知ることで、必ずどこかのタイミングでその知識がアドバンテージになることでしょう。
こちらのお講座では、特に個人講座では一人ひとりに寄り添い、先生が的確な学びをくださり自信をつける方向へ後押ししてくださいますので、今はまだ自信が持てないという方も含めて、さらに自分を輝かせて行きたい方にお勧めしたいです。
西洋のフォーマルな場では、ホストとホステス、エスコートする側とされる側など、場を運営するための役割が明確に分かれています。その役割を知っていることは、性別を問わず、場の一員として信頼されるための前提となります。
では、体系として学んだ先には何があるのでしょうか。そこで、エチケットとプロトコールの違いが意味を持ちます。
エチケットから国際プロトコールへ 受講生の口コミが示すもの
S.Y.さんの学びは、国際プロトコールの入口に立ったことを意味します。
エチケットは個人と個人の間で働き、文化によって形を変えます。一方、プロトコールは国家や組織の間で働き、公平性と一貫性を目的とします。
その原点を示すのが、1815年のウィーン会議です。外交使節の席次を、国の大小ではなく着任の日付で決める規則が定められ、それまで繰り返されてきた席次争いに終止符が打たれました。この原則は、1961年の外交関係に関するウィーン条約第16条に引き継がれています。
日本もまた、独自のプロトコールの伝統を持つ国です。明治初期の岩倉使節団(1871〜1873年)は、欧米各国の宮廷や公式行事を訪ね、その様子は久米邦武編『特命全権大使 米欧回覧実記』に克明に記録されています。日本は自らの礼法の伝統を持ったまま、西洋の儀礼を学びに行ったのです。
S.Y.さんの歩みも同じです。日本人としての感性を手放すことなく、西洋のエチケットとその精神を身につけた。国際プロトコールを学ぶ受講生の感想として、これ以上に本質を突いた言葉はそう多くありません。
視野が広がると、人は揺らがなくなる
受講を終えたS.Y.さんは、後日、ある出来事を寄せてくださいました(以下、編集部による要約です)。
カフェで隣り合わせた若い女性が、菜食を選んでいることを周囲から特別視される戸惑いや、人との関わりに感じる息苦しさを話していた。その言葉は鋭く本質を捉えていて、国際的なコミュニケーションの素質を十分に備えているように感じた。世界では食の選択の多様さは当たり前であり、それを知っていれば周囲の一言に揺らぐこともないはずだ。感受性が豊かで聡明な人ほど息苦しさを抱えている。いつか彼女のような人に、この学びが届いてほしい。
世界には菜食を選ぶ人も、宗教上の食の規範に従う人も数多くいます。ユダヤ教のカシュルートやイスラームのハラールは、その代表です。国際的な会食で、主催者がこうした事情を事前に確認することは、個人の気遣いを超えた、プロトコールの基本です。
世界の標準を知る人は、目の前の小さな評価に左右されません。S.Y.さんが願ったのは、その揺るがなさが、まだこの学びに出会っていない人にも届くことでした。
最後に、S.Y.さんの歩みを間近で見守った学院長の言葉をお届けします。
学院長より
S.Y.さんは、とても深い感性をお持ちの方でございます。この講座でも、多くのことを吸収してくださいました。
受講を始められた頃は、たくさんの魅力をお持ちでありながら、どこか殻に閉じこもっていらっしゃるようにお見受けいたしました。それでも、何かを変えたいと願っていらっしゃることは、はっきりと伝わってまいりました。
回を重ねるごとに磨かれていくお姿は、眩しいほどでございました。素晴らしいご感想を賜り、心より御礼申し上げます。
白羽セシリア美麗 ICPA 創設者・学院長
まとめ
- 海外で感じる違和感の多くは、語学力ではなく、言葉の手前にある暗黙の規範から生まれます。
- その壁は、ルールという形と、その背後にある精神という二重の層でできています。
- 国際的な振る舞いは才能ではなく、西洋でも日本でも書き記されてきた体系であり、その延長に国際プロトコールがあります。
次に海外で違和感を覚えたときは、それを語学のせいにせず、「この場の暗黙の規範は何か」と自らに問いかけてみてください。その問いが、見えない壁を越える第一歩となります。
S.Y.さんが学んだ講座と、その先の学び
S.Y.さんが修了した講座は、現在 The Social Elegance として、ICPAまたはTEAで受講いただけます。 → The Social Elegance の詳細はこちら
エチケットの先にある国際プロトコールを、体系として修めたい方へ。
- Global Business Protocol(The Global Authority):国際ビジネスの場で求められるプロトコールを体系的に修める基幹プログラム → プログラムの詳細
- Executive Protocol(The Executive Pinnacle):王室・外交・国際機関と向き合う立場の方のための最上位プログラム → プログラムの詳細
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出典
- Edward T. Hall, The Silent Language, Doubleday, 1959.(邦訳:エドワード・T・ホール『沈黙のことば』南雲堂)
- Edward T. Hall, Beyond Culture, Anchor Press/Doubleday, 1976.(邦訳:エドワード・T・ホール『文化を超えて』TBSブリタニカ)
- Desiderius Erasmus, De civilitate morum puerilium, 1530.
- Norbert Elias, Über den Prozess der Zivilisation, 1939.(邦訳:ノルベルト・エリアス『文明化の過程』法政大学出版局)
- 二木謙一『中世武家儀礼の研究』吉川弘文館、1985年
- Règlement sur le rang entre les agents diplomatiques, Congrès de Vienne, 19 mars 1815.
- Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961, Article 16.
- 久米邦武編『特命全権大使 米欧回覧実記』1878年(岩波文庫版あり)
- レビ記 第11章(カシュルートの典拠)/クルアーン 第2章173節(ハラールの典拠)


